投稿エッセイ集「ありがとうiPod」 > 作品020

手のひらのタイムカプセル

ダイヤテック株式会社

学生時代の友人から、結婚式の招待状が届いた。
式が行われるのは、通っていた学校のある、数百キロも離れた町。
懐かしい町で、久しぶりに仲間たちと再会できる。
その町へのドライブ中に聞く曲を、プレイリストで作ることにした。

当時、仲間たちみんなが聞いていた洋楽オムニバスアルバムに入っていた曲や、カラオケに行っては必ず歌っていた曲を、どんどんプレイリストに突っ込む。
もう聞くことも無いと思っていた古いCDも、引っぱり出してきてリッピングした。
プレイリストに目的地の町の名前をつけて、iPodに転送して出来上がり。
うんざりするような長時間のドライブが、ちょっと楽しみになる。

結婚式の当日、式に出席する同窓生の友達をひとり拾って出発する。
FMトランスミッタをつないだiPodから流れ出る、懐かしい音楽たち。
音楽は不思議なもので、昔の曲を聞くと、聞いていた当時のことが思い出される。
学生時代は色んな夢を抱いていたけれど、今はどうだろう。
忙しい日々に追われ、無くしてしまった気持ちがいかに多いことか。
大人になるって、こういうことなんだなあ……。

結婚式では、友達である新郎には職場での新しい仲間ができていて、学生時代の友人である自分たちは、なんとなく部外者のような居心地の悪さを感じさせられた。
時間が経てば、付き合う人間も変わって、みんな結婚して、離婚して、はやりの音楽も変わる。
学生時代へのつかの間のタイムスリップを期待していたけれど、逆に現実を突きつけられた思いがした。
青春なんて、今は昔。
遠いこの町に来ることも、もうないだろう。

それからしばらく経ったある日、ドライブのために古いCDからリッピングした曲が、シャッフル再生中のiPodから流れ出した。
その歌に込められた深いメッセージに、その時はじめて気づくことができた。
疲れているのだろうか、よくある流行歌が、やけに心にしみる。

ダイヤテック株式会社
作者紹介
著者近影 お名前 YOSHIMI
ウェブサイト
自己紹介 最新の音楽についていけなくなった中年男。
所有するiPod iPod 4G、iPod nano 2G、iPod classic

このページのスポンサー:ダイヤテック株式会社[広告掲載2008年2月7日〜2013年2月6日]


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