投稿エッセイ集「ありがとうiPod」 > 作品022

以心伝心

FMトランスミッターも併用できる、iPod専用カーリモコン。【サン電子】

天気のいい平日。アルバイトが休みの僕は社会人一年目の友人達を誘う訳にもいかず(彼女もいないし)一人で家を出る。特に目的は無い。強いて理由を挙げるならば、音楽を聴くため、だろうか。

家を出る前の合言葉は「サイフ、ケータイ、iPod」この合言葉を言いながらお気に入りのジーンズのポケットを右、左、後ろの右の順番にそれぞれ軽く叩いていく。薄っぺらくてそこに入っているのかも疑わしいサイフの感触、ストラップがゴツゴツしているケータイの感触、そしてシリコン製のケースで包まれた優しい感触のiPodをそれぞれデニム生地の上から確認するのだ。この3つの存在を確認して、ようやく家を出る。

右後ろのポケットからiPodを取り出し、他社の携帯型音楽プレーヤーとの区別を決定的にしたであろう白く長いイヤホンを耳につける。再生ボタンを押し、本体部分はTシャツの内側を通し、また元のポケットへと戻す。白い線と横腹の部分が触れ合って少しひんやりするけれど、それも最初の一曲が終わる頃には体温のおかげでわからなくなる。こうなればiPodはもう体の一部だ。

Tシャツの首元とすそ口からチラっと白い線を見せながら歩く。これが僕の音楽を聴くときのスタイル。僕は、どうも家でゆっくりと音楽を聴くという事が苦手らしい。背筋を伸ばし、闊歩しながら音楽を聴くのがとても落ち着くのだ。

曲順はシャッフルにしておけばいい。僕は一人で出かけようと思ったのだから、iPodにも僕の意見を反映させずに一人で歩かせてやったほうがいいと思う。けれどもこういうときのシャッフルの順番は、不思議と今の自分の気分とマッチしてくるものなのだ。

iPodが曲を流してくれる、僕がその曲を口ずさむ。そんな会話のキャッチボールを繰り返しながら歩く。それだけで友人と、あるいは彼女と何か楽しい話をしているような気分になれる。

そんな訳だから、僕はiPodと出会ってからというもの、大凡一人で外出したことはない。それはiPodを持っている人なら誰でもそうであると思う。iPodはもはや携帯型音楽プレーヤーではなく、一人の友人や彼女なのだ。

ありがとうiPod

FMトランスミッターも併用できる、iPod専用カーリモコン。【サン電子】
作者紹介
著者近影 お名前 えいてぃー
ウェブサイト
自己紹介 文章を書く事と麻雀が好きなフリーター
所有するiPod iPod nano 8GB

このページのスポンサー:サン電子株式会社[広告掲載2008年4月18日〜2013年4月17日]


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