投稿エッセイ集「ありがとうiPod」 > 作品029

世界でひとつだけのiPod

iPod専門店 Kitcut SecondaryStore

僕は小さいころから病気がちで、あまり楽しいことがありませんでした。
気が小さくてなかなか人と仲良くなれない内向的な性格の人間でした。
人見知りで、挙動不審で、へたれでした。
そんな僕にも高校生のときに親友と呼べる友達が一人出来ました。
その人は僕が一人で落ち込んでいたり元気がないときにはいつも声をかけてくれました。
ビリヤードやボーリング、カラオケなどして遊んだりもしました。
彼の前だけでは僕の心をさらけ出すことが出来ました。
彼は僕にとって太陽のような存在でした。

今では僕も大人になり、その友人は僕の二十歳の誕生日にiPodをプレゼントしてくれました。
そのiPodは第6世代のclassicで、裏の鏡面には僕の名前のロゴ入りでした。
(しかもその名前というのは、いつも彼が僕のことをそう呼んでいる、恥ずかしいニックネームでした。)

恥ずかしかったけど、うれしかったです。
彼は僕が喜ぶ顔を想像して、こつこつと五百円貯金をしていたのだと語りました。
そんなことなにも聞かされていなかったので、驚かされました。
それまでプレゼントらしいものを何ももらったことがなかった僕は、心のこもったそのプレゼントに、うれしくてとてもあたたかい気持ちになれました。
そのプレゼントは、大人への境界線に立つ僕の漠然とした不安な気持ちをやわらげてくれました。
その日から僕は、暇さえあればiPodを耳につないでは液晶を眺め、一人にやにやと笑うのでした。
今ではもう完全にiPodのとりこになってしまいました。
世界でひとつだけのiPodをプレゼントしてくれた友人に感謝してます。

それまで、音楽というものには全く関心がなく、テレビやラジオ、コンビニや喫茶店でたまに耳にする程度でしたが、その日以来、音楽をiPodで携帯する魅力にとりつかれてしまい、いつでもどこでも手放せない状況です。
音楽のある風景って、本当にいいですね。

iPodを手にしてからというもの、日常の風景がドラマチックに写るようになりました。
ときにはしとやかに、ときにははげしく、iPodは僕の世界を劇的に変えてくれました。
そして僕は、iPodの鏡面に刷られた、その恥ずかしい名前ロゴを目にするたびに、がんばろうという元気をもらいました。
そのことがどれほど僕の支えになったことでしょう。

iPod、そしてそれにかかわるすべての方々に、心からありがとう。

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作者紹介
著者近影 お名前 さいとう
ウェブサイト
自己紹介 iPod依存症です。いつでもどこでも手放せません。
所有するiPod iPod classic

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