命を繋いだiPhone

2011年3月11日、日本中を震撼させた未曾有の悲劇、東日本大震災に見舞われた。
午後2時46分だった。

私の住んでいる場所の震度は６弱。岩手県南部、内陸だ。
その時私はたった一人でおり、家族がどうなったか知る手段もなく、３月だというのに雪がちらつく窓の外を観ては心を落ち着かせ、メチャクチャになったマンションの部屋で震えていた。
何から手をつけていいかわからず、頭が真っ白だった。
地震直後からすべてのライフラインが停止した。
誰しもが「まさか」と思うような生命の危機を感じていた。

地震発生から１時間ぐらいしただろうか、マンションの外で人の声がしだした。
隣人の顔もよくわからない、知ろうとしていなかったマンションの住人が声をかけ合っていた。
「電池ありますか。」
「あそこのコンビニにはお水が置いてありますよ。」
「ラジオを聞かせていただけませんか。」
一人であったけれど、他人がこれほどありがたく、孤独の恐怖を埋めてくれたことに今は感謝している。

私の緊急時の備蓄は、はっきり言ってゼロだった。
水も、電池も、そしてiPhoneやiPadのバッテリーも。すべてが枯渇しかけていた。
電話も通じず、駅構内の電話ボックスまで歩いて長蛇の列に並び、家族の安否を気遣う人たちの列に並んだ。
もちろん、東北６県すべてが停電していたためラジオやテレビの中継基地局も停電していたため、安否情報をどこから得たらいいのかもわからなかった。

少し落ち着きを取り戻した時、iPhoneを取り出す余裕がでてきた。
すべてのライフラインが停止している中、iPhoneのツイッターやネット環境は目の前の現状が嘘のようにいつもどおり動いていた。
一人の孤独感に胸を押しつぶされそうな中、涙が出るほど勇気を与えられた。
日本全国、いや、世界中の情報が私たちの必要としていた生きるための綱を、ネットを通じてこちらに手渡してくれた。
iPhone、iPadが人命を救うのだと、感動した。

夕闇が迫る夕方になり、気温も零度以下に下がり始めていた。
電気を失った岩手の夜空は嘘のように満天の星空。
人口の光を失って深深と冷え、身を切る寒さに震えながら、あまりにも美しい星空に息を呑んだのを今でも鮮明に覚えている。

寒さが身に襲い雪が降り出した頃、貴重な車のガソリンを使ってでもなんとかiPhoneのツイッターやウェブニュースの情報を得るためにバッテリーを補充しつつ、暖をとった。
あの時の安心感は何にも代え難い。
iPhoneのバッテリーマークがフルに近づくと共に命の充電をしている感覚にとらわれた。

未曾有の東日本大震災は岩手だけでなく、経験したすべての人がそれぞれ命の危機をいろいろな形で感じたに違いない。
しかし、インターネットツールがここまで人命を救った、救われたと言える状況に直面したのも初めてだったに違いない。

あの日から１年半経った今、私はいざというときのためにiPhone、iPad専用の大容量バッテリーを常にフルにしてある。
孤独と寒さから守り、命の情報を与え続けてくれたiPhoneは私の中で大きな存在である。

本当にありがとう、iPhone。
これからも、よろしく、iPhone。

作者紹介
	お名前	rino0513
	ウェブサイト	Vous devez etre vous
	自己紹介	Bltyhe, 球体関節人形, 写真, 一眼レフ Nikon D5100, トイカメラ, iPhone4S, iPad2, PC周辺機器, 音周り BOSE, 音楽 BSB, Owlcity, VOCALOID, 犬 キャバリア, 車 Honda CR-Z, バイク Hornet 250cc
	所有するiPod	iPhone 4S、iPad 2

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