iPhone 15、iPhone 15 Proでは、充電・データ同期用の接続端子がLightningからUSB-Cに変わりました。
EUでデバイスの端子の種類を統一する、法案に合わせた形です。
参考:EU、スマホなどの充電を「USB-C」統一に決定 – ケータイ Watch
とはいえAppleも、iPadでは先にLightningからUSB-Cへの移行を進めていました。
iPhoneもいずれはUSB-Cに移行する手はずだったことでしょう。
16年の歴史をもつiPhoneは、端子の規格が変わるのは今回で2度目です。
前回は11年前の2012年。
iPhone 4sまでのDockコネクタを廃止して、iPhone 5でLightningが採用されたときです。
広く普及している端子が変わることにより、混乱が生じる心配があります。
前回変わったときはどうだったのか? この機会に振り返ってみようと思います。
Dockコネクタ(30ピン)とは?
Lightningに変わる前に、iPhoneに搭載されていた端子が「Dockコネクタ(30ピン)」です。
もともとはiPhoneが登場するより前、携帯音楽プレーヤーの「iPod」で採用されていたものです。
2003年に、第3世代のiPodで初めて登場しました。
Lightningと同じく、Appleによる独自規格です。
Lightningに比べると横幅があります。
表裏の向きが決まっていて、端子に書かれたマークを表にして差し込む必要がありました。
スピーカーをはじめ、映像出力ケーブルや、SDカードリーダーといったアクセサリを接続できる拡張性が、iPodの頃から実現されていました。
Dockコネクタは2007年に登場したiPhone、2010年のiPadにも採用されました。
iPodと同じケーブルや、車載用品などのアクセサリを、iPhoneとiPadにも使うことができました。
Dockコネクタのプラグ側は、当初は横にロックボタンがあり、これを押しながらでないと抜けない仕掛けでした。
その後ロックボタンが廃止され、プラグが小型化されました。
Lightningの登場
Dockコネクタの後継規格として、2012年に登場したのがLightningコネクタです。
iPhone 5のほかに、第5世代iPod touchと、第7世代iPod nanoにも同時に採用されました。
ニュースリリースでは、以下のように解説されています。
iPhone 5には、従来のコネクタよりスマートで小さく、耐久性も向上した新しいLightning™コネクタを備えています。完全にデジタルのLightningコネクタは、接続したアクセサリに必要な信号だけを使用するインターフェイスを特長し、アクセサリを瞬時に接続することができるリバーシブル形状になっています。また、iPhone 5を従来の30ピンコネクタ用に設計されたアクセサリをiPhone 5に接続できるように、Lightning – 30ピンアダプタも用意されています。
Dockコネクタと比較して、80パーセントも小さくなったとされています。
- アップル – iPhone 5 – iPhone 5を生み出した方法をご紹介します。(Internet Archive)
Lightningに変わって何が起こった?
端子が小型化され、向きを気にせず差し込めるリバーシブルになるので、Lightningは明らかに便利に見えました。
ユーザー側の意識としては、端子が変わることへの不安よりも、歓迎ムードだったように思います。
iPhone 5と同じ年に登場した、iPad(第4世代)とiPad mini(第1世代)にも、もちろんLightningが採用されました。
iPhone/iPod/iPadのDockコネクタ用に作られた周辺機器が、Apple純正でもサードパーティ製でも、当時からたくさんありました。
これらのアクセサリを引き続き使えるように、Appleははじめから2種類の変換アダプタを用意していました。
- Lightning – 30ピンアダプタ(MD823AM/A)
- Lightning – 30ピンアダプタ(0.2 m)(MD824AM/A)
現在は4,780円と6,480円になっていますが、2012年の発売当時は2,800円と3,800円でした。
これらのおかげで、それまでにiPhone/iPodのために買い揃えた資産が、無駄にならず引き続き使うことができました。
ただし映像出力だけは、アダプタを介して行うことはできず、Lightningコネクタの新しいものに買い替える必要がありました。
AppleはLightning用に新たに設計した映像出力ケーブルや、カメラリーダー、変換アダプタなどを次々にリリースします。
LightningコネクタはAppleによる認証チップが必要で、サードパーティが勝手に互換品を作ることはできませんでした。
認証されていない製品を接続すると、画面に警告が出ることがありました。
最初に登場したAppleの認証を受けたサードパーティ製品は、JBLのスピーカーや、Belkinのカーチャージャーでした。
Lightningコネクタは、iPhone/iPad/iPodといったハードウェア本体だけではなく、周辺機器・アクセサリの充電端子にも広がります。
Mac用のワイヤレスキーボードやマウス、AirPods、Apple Pencil、Apple Remote、Beatsのスピーカーやヘッドフォンなどです。
iPhoneと同じ充電ケーブルで、これらを充電することができました。
またApple向けのサードパーティ製品にも、主にMicro USBの替わりにLightning端子が使われるようになりました。
モバイルバッテリーやゲームコントローラーなどがありました。
USB-Cに変わると何が起きる?
iPhone 5で突如登場したLightningコネクタと違って、USB-Cはすでに広く普及している標準規格です。
iPadも先にUSB-Cへの移行を進めているので、iPhoneのUSB-C化も、スムーズに受け入れられることでしょう。
またDockコネクタからLightningに変わった11年前と比べて、現在は充電もデータ同期もワイヤレス化が進んでいます。
本体の接続端子は、今後はあまり利用されなくなるかもしれません。
Appleは今回も、変換アダプタ「USB-C − Lightningアダプタ」を用意しています。
いままで使っていたアクセサリなども、新しいiPhone 15で使うことができます。
ただし前回のDockコネクタ→Lightningへの移行と違って、心配な点がふたつあります。
ひとつは、LightningとUSB-Cの端子は、大きさ・形が似ていることです。
もうひとつは、Lightningはあまりにも広く普及して、さまざまな製品に利用されているということです。
初心者の方には注意が必要だし、慣れているユーザーでも「刺し間違い」が発生する可能性があります。
Dockコネクタが廃止されてから10年以上経った現在でも、Appleは「30ピン – USBケーブル」の販売を継続しています。
Lightningコネクタもしばらくの間は、世の中に残りそうです。