2019年11月のサービス開始から、丸6年が経過したApple TV+。
Appleオリジナル作品の映画やドラマだけで、膨大なライブラリを構築するまでに成長しています。
ほかの配信サービスよりも良質な作品が揃っている、言い換えれば「ハズレがない」ことでも、高い評価を得ています。
毎月のように新作が追加されているので、過去の名作が埋もれてしまいがちです。
今回から「Apple TV+名作ガイド」として、旧作を中心に、筆者が観て気に入ったおすすめ作品を紹介していきます。

第1回はジェイソン・モモア主演の超大作SFドラマ「See ~暗闇の世界~」を取り上げます。
Apple TV+のサービス開始時のラインナップ8作品にも含まれる、初期の代表作のひとつです。
「See 〜暗闇の世界〜」作品概要

舞台は600年後の未来です。
ウイルスにより人類は絶滅寸前まで追いやられ、生き延びた全人類も視力を失っています。
この世界では、人間の視力「ビジョン」は既に伝説となり、魔術か呪いのように恐れられる禁忌となっています。

しかしジェイソン・モモア演じる部族長ババ・ヴォスのもとに、失われていた「ビジョン」を持った双子が誕生します。
「ビジョン」が権力を脅かすことを恐れ、抹消しようとたくらむ女王ケインの脅威から、双子と部族を守るための、ババ・ヴォスの戦いが始まります。
- 配信プラットフォーム:Apple TV+限定
- 完結済み
- 3シーズン・各8話の全24話
- 各話50〜60分
- 年齢制限指定 18+
- 日本語字幕、日本語吹き替え音声あり
- SDH(聴覚障害者向けの字幕)とAD(視覚障害者向け音声ガイド)にも日本語があるバリアフリー仕様
おすすめポイント
家族の絆ときょうだい喧嘩

ジェイソン・モモア演じる主人公のババ・ヴォスは、部族を率いる強靭な戦士であるのと同時に、家族を溺愛し何よりも大切にする父親です。
ババ・ヴォスとその妻マグラ、双子のハニワ、コフンの、4人の家族の絆が物語の中心です。

しかしババ・ヴォスには、家族にも打ち明けられない後ろ暗い過去があります。
妻のマグラも、驚くべき出自を秘密にしています。
禁忌とされる視力を持った双子は、家族以外にはにその能力を隠しながら生きていく宿命を背負っています。

時には衝突したり、離れ離れになりながらも、物語の全編を通して、家族の愛と絆が描かれます。
家族愛が描かれる一方で、3シーズンを通して何組かの「きょうだい」が対立し、周囲を巻き込んで争う、迷惑なきょうだい喧嘩の物語となっています。
個性あふれる魅力的なキャラクター

家族の心の支えとなる預言者パリス(アルフレ・ウッダード)をはじめとして、脇を固める登場人物たちも、魅力的なキャラクター揃いです。
私は特に、個性あふれるヴィラン、敵役たちに惹かれました。

双子の命を狙う冷酷な女王ケインは、短く刈った坊主頭の特徴的な風貌で、独特な「祈り」の方法にも驚かされます。

女王ケインに使える「魔術師狩り」の将軍、タマクティ・ジュンは、私の最推しキャラクターです。
軍隊を率いて主人公たちを追い詰める、残虐非道な指揮官ですが、彼は過酷な任務にも忠実な臣下で、部下たちを思いやるリーダーでもあります。

ババ・ヴォスと対決するエド(シーズン2)や、失われた過去のテクノロジーで兵器を開発するマッドサイエンティストのトルマーダ(シーズン3)なども、どこか憎めない、信念を持った敵役として描かれています。
あなたの琴線に触れるキャラクターもきっと登場するはずです。
散りばめらたジャポニズム
「See 〜暗闇の世界〜」はジャポニズム、日本趣味がさまざまな部分に散りばめられていて、日本人としては親近感が湧きます。

まず視力を持って生まれてくる双子の名前は「ハニワ」と「コフン」です。
明らかに「埴輪」と「古墳」から命名されていますが、劇中では由来は説明されません。

ババ・ヴォスは盲目の戦士として剣を振るい敵を斬る、見事な殺陣を演じます。
この剣技には、日本の時代劇「座頭市」へのオマージュが見て取れます。

ババ・ヴォスが日本由来の袴や甲冑を身につけ、刀で戦うシーンもあります。
演じたジェイソン・モモアが嬉しそうに、「サムライ役に憧れていた」「夢が叶った」と語っているのが、メイキング映像に収められています。
視力が失われた世界を描く、綿密な設定

全人類が視力を失った未来で、人々はどのように暮らしているのか。
だれも見たことがな世界が、綿密に構築されていて、SFとしても興味を惹かれます。

たとえば文字の代替として、紐に結び目を作って、手紙や伝言として利用されています。
街では歩むべき道の手がかりになるように、頭上に張り巡らせたロープから、一定間隔で紐が垂らしてあります。
視力のかわりに聴覚、嗅覚、触覚が発達し、未来を予知できる能力を持つ者も登場するするファンタジー要素もあります。

これらの世界観を構築するために、実際の視覚障害者が監修として関わっています。
また視覚障害者が演技をアドバイスしたり、俳優として出演したりもしています。
上の写真でマグラ役のヘラ・ヒルマーと話しているのは、作品の共同プロデューサーで、視覚障害コンサルタントのJoe Strechay氏です。
見える者がマイノリティ、見えない者がマジョリティとなった、現実とは逆転した世界がリアルに描かれているのも、このドラマの大きな特徴です。
「See 〜暗闇の世界〜」の視聴方法
「See 〜暗闇の世界〜」は、Appleのサブスクリプション映像配信サービスApple TV+での限定配信です。
見始めたら続きが気になって、止まらなくなること間違いなしの面白さです。
完結済みなので、最後までイッキ見できます。
作品詳細・配信ページ:See ~暗闇の世界~を視聴 – Apple TV

