【編集後記】Digital Crown × クリックホイール = カメラコントロール

Digital Crown × Click Wheel = Camera Control

iPhone 16/16 Proのカメラコントロールは、Digital CrownをiPodのクリックホイールのようにしたものだと気がつきました。
これからのApple製品のDigital Crownが、カメラコントロールと同じスタイルになる可能性があります。

目次

カメラコントロールとは

iPhone 16 Pro

iPhone 16/16 Proには、新しいインターフェース「カメラコントロール」が搭載されています。
その名のとおり、カメラを操作するためのものです。
押すだけでカメラが起動し、もういちど押すとシャッターを切れます。

iPhone 16 ProとSmart Battery Case

iPhoneにこのような機能が追加される予兆は、5年前からありました。
2019年にiPhone 11/11 Pro用に発売された「Smart Battery Case」のカメラボタンです。

Smart Battery Case

Smart Battery Caseのカメラボタンは、iPhone 16のカメラコントロールと同じ位置にあります。
カメラボタンを押すとカメラアプリが起動し、もう1度押すとシャッターを切れます。
押し続けるとビデオ撮影になり、指を離すと録画が終了します。
Smart Battery Caseは、このモデルを最後に廃止されたので、「カメラボタン」も1世代で姿を消しました。

iPhone 16 Pro

iPhone 16のカメラコントロールは、Smart Battery Caseのカメラボタンとは違い、単なるボタンではありません。
感圧センサーとタッチセンサーも搭載しています。
スワイプすることで、ズームイン/ズームアウトしたり、設定を切り替えたりできます。

使ってみると、マウスのホイールや、一部のガラケーに採用されていた「ジョグダイヤル」に近い使用感だと気づきます。
指で左右にスワイプする操作は、ホイール状のものを回すのと同じです。
物理的に回転するホイール/ダイヤルのかわりに、スワイプするタッチセンサーを採用しているのです。

カメラコントロールとDigital Crown

これって実は、形が違うだけで、Digital Crownとほぼ同じ機能なんですよね。

Digital Crownとは

Digital Crown

Digital CrownはApple Watchで初登場した、普通の腕時計でいう「竜頭」にあたるインターフェースです。
回転する「つまみ」と、押し込めるボタンをひとつにしたものです。
現在ではApple Watchのほかに、AirPods MaxとApple Vision Proにも搭載されています。
Apple Watchのモデルによっては、指を当てて利用する電気心拍センサーも兼ねています。

Digital Crown

「回す」「押す」という点で、カメラコントロールとDigital Crownは、同じ機能と言えます。
物理的に回転する構造に替えて、タッチセンサーを採用したのが、カメラコントロールです。

それって「クリックホイール」だよね

回転ホイールをタッチセンサーに変えて、ボタンも兼ねたもの。
そんなインターフェースが、かつてのApple製品にもありました。
iPodのクリックホイールです。

メカニカルホイールのiPod

iPodの操作部分は、もともとは物理的に回転する機械式ホイールと、5つのボタン(4方向+中央)を組み合わせたものでした。
それを進化させたのがクリックホイールです。

クリックホイールのiPod

クリックホイールは、円盤の部分は実際には回転せず、指で回すように表面をなぞるタッチセンサーになっています。
4つのボタンも一体化していて、押し込むことでMENU、再生/一時停止、曲送り、曲戻しの操作ができます。

親指1本だけで選曲や音量調節など、音楽プレーヤーiPodのあらゆる操作ができる、優れたインターフェースでした。
2004年にiPod miniで初登場し、2014年にiPod classicが販売終了になるまで採用されていました。
iPodがホイールをタッチセンサー式に変更した理由は、可動部をなくすことで故障を減らすのと、薄型化する狙いがあったようです。

iPodの機械式ホイールがクリックホールに進化したのと同じように、Digital Crownを薄型化・タッチセンサー化したのがカメラコントロールだと言えます。

Digital Crownはカメラコントロール型になっていくか

Digital Crownを搭載したApple製品には、以下の3つがあります。

Apple WatchとAirPods Max、Apple Vision Pro

  • Apple Watch
  • AirPods Max
  • Apple Vision Pro

もしかしたら今後これらのDigital Crownはすべて、カメラコントロールと同じスタイルのボタン+タッチセンサーになるかもしれません。
これらのDigital Crownを、カメラコントロール型のインターフェースに置き換えられるか、考えてみます。

Apple Watc

Apple Watchは横の出っ張りがなくなり、上下左右も対称形の、よりシンプルなシルエットになるでしょう。
サイドボタンは、反対の側面に移動するかもしれません。
電気心拍センサーは、もしタッチセンサーとの併合が難しいなら、サイドボタンの方に移せばいいでしょう。

AirPods Max

AirPods MaxのDigital Crownも、カメラコントロール型にしても問題なさそうです。
実はAirPods Pro 2には、すでにそのようなインターフェースが採用されています。
ステム(軸)の部分にある「タッチコントロール」です。
AirPods Pro 2のタッチコントロールは、押すことで音楽や通話の操作ができ、上下にスワイプすることで音量調節ができます。

Apple Vision Pro

Apple Vision Proは、Digital Crownをカメラコントロール型に変更するデバイスの本命だと私は思っています。
「Apple Vision」シリーズの後継機が将来、小型化が進んでメガネのようになった際には、Digital Crownが突き出ているのは不恰好です。
「メガネ型Apple Vision」のフレームの上に、カメラコントロール型のインターフェースが載っているのが想像できます。

カメラコントロールはタッチセンサー式Digital Crownの試作?

今回のカメラコントロールは、iPhoneに「新しい機能」を提供するものではなく、「新しい操作方法」を加えるものです。
言いかえると、できることは今までと変わらず、やり方を増やしただけです。
あらゆるものをソフトウェアで制御したがるAppleとしては、ハードウェア上にボタンを増やすのは稀で、私は違和感がありました。

iPhone 16 Pro

これはもしかして、将来ほかのデバイスで使うためのインターフェースを、iPhoneで試しているのではないかと想像しました。
今後ほかの製品で採用するとして、iPhoneで技術開発や製造の下地づくりをしておけば、低コストで生産できるようになります。
iPhoneの機能として発展してきたLiDARスキャナやARが、Apple Vision Proに活かされたのと同じです。

小さいスペースに機能を詰め込んだこの新しいインターフェースは、Apple WatchやApple Visionのほかに、Apple Pencilなどにも採用される可能性を秘めています。

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