Apple初の「空間コンピュータ」Apple Vision Proでは、ユーザーの目の前の空間に、ウインドウを表示させることができます。
WWDCの基調講演で、画面が浮かんでいるような映像を目にして、私は「ついにやり遂げたか!」と感慨深く思いました。
Appleが長年、画面を空中に浮かようと苦心してきたのを知っているからです。
この話を「編集後記」コーナーでするのは3度目なので、覚えている方もいるかもしれません。
最初は10年前の2013年に、iPad Airが発売されたときのことです。
Appleのデザイナー(当時)、ジョニー・アイブが手がけた過去のデザインからは、画面だけが宙に浮かんだコンピューターを目指しているのが伺える。
iPad Airはその志向に最も近いデバイス。
「Air」という名前にもそれが表されている、という内容です。
当時の記事:アイブが目指した「画面だけが宙に浮かんだコンピューター」
2回目は3年前の2020年。
iPad用Magic Keyboardを、Appleが「フローティングデザイン」「浮いてる」とアピールしたときです。
アイブの目指していたものが実現した? として紹介しました。
当時の記事:ジョニー・アイブの悲願達成? 10年がかりでiPadが宙に浮いた」
そして今回のApple Vision Proです。
物理的なディスプレイが浮いているわけではないけれど、ユーザーの視点では間違いなく、画面が目の前に浮かんでいます。
反重力装置の発明を待たずして、現在のさまざまな技術を駆使し、ついにAppleは空間に画面を浮かべてみせたのです。
しかもApple Vision Proのウインドウは、いくつも並べたり、奥行きのあるものを表示させることもできます。
そういえばAppleはAR・拡張現実にも力をいれてきたことが思い出されます。
Apple Vision Proで実現した世界をみると、これぞまさに“拡張現実”と感じます。
Apple Vision Proによって宙に浮かんでいるように見える画面は、実際には「2枚の小さなディスプレイに表示されたウインドウ」です。
でも両目の前に配置して、リアルタイムに外の世界を映し、頭の動きと連動させることで、宙に浮かんだウインドウのように感じます。
重力に逆らう必要はなかったんですね。
重力から解放されたウインドウ、スクリーンは今後、これまで私たちの想像してこなかったような進化を遂げる気がしています。