この記事は3D Touch機能の、ユーザビリティ上のいくつかの問題点を指摘することを目的に書いています。
3D Touchの前評判
見た目は前モデルと変わっていないiPhone 6sにおいて、目玉機能として注目されているのが3D Touchです。
3D Touchは、画面を押す強さを感知できるようになったものです。
これまでのタップ操作に加えて、画面を強く押すことで、様々な便利機能が使えるようになりました。
この機能については、操作を複雑にし、教えられないと気付きにくいと危惧する声がありました。
(参考:新iPhoneの「3D Touch」に抱く懸念 – ITmedia ヘルスケア)
その一方で、タッチスクリーンの操作はいままでどおりであり、操作に慣れているユーザがより便利に使える「中上級者向けの機能」だとする意見もあります。
(参考:Apple新製品のすべて【特大版】:「iPhone 6s」を林信行が読み解く――これは“羊の皮をかぶった狼”である (2/6) – ITmedia PC USER)
実際使うと、誤作動という別の問題が
実際に使ってみると、上の記事とはまったく別の問題点を3D Touchに感じました。
普通のタップが、強く押していると認識されてしまうことです。
これはiPhone 6sに触れた方が、誰しも体験したであろうことと思います。
例えばホーム画面のアプリを並べ替えるために、アイコンを長押しすると、強く押したと認識されてしまうことが多々あります。
長押しでの画面編集モードになるのを知っているのに、6sではできない、方法がわからないと戸惑うユーザーも多いようです。
(そこで昨日の豆知識コーナーで解説するとこにしました)
私が特に誤作動で悩まされているのがSafariです。
リンクを開こうとしたときに、「Peek」(すこし力を入れてプレビューする、のぞき見機能)が開いてしまいます。
力を込めずに操作するストレス
このようにiPhone 6sでは、3D Touchとして認識されないよう、軽くタップするよう必要がでてきました。
「中上級者向けの便利機能」に収まらず、普通の操作の妨げになっているのです。
親指はiPhoneを握って保持するのに使っているので、タッチスクリーンの操作においても、どうしても力が入ってしまいます。
いままでどおりに操作しているつもりでも、3D Touchとして認識されてしまうのです。
特に従来の「長押し」操作時に、強く押していると認識されることが多いです。
力を込めずに操作するのは、生卵が割れないように握るのと同じで、とても神経を使うことです。
私たちの生活環境において、押す強さによって機能が変わるボタンというのは、あまり例がありません。
エレベーターのボタンや、テレビのリモコンボタンなどは、単一の機能しかないからこそ、無造作にポンと押すことができます。
(一応書いておくと、3D Touchの感度を調節できる設定が用意されています。ただし感度の差は微々たるものです)
直感的であるべき圧力感知機能
3D Touchに感じる使いにくさは、誤作動だけではありません。
強く押すという動作と、それによる機能の働きが、直感的に結びつかないのです。
マウスのホイールを上下に回すと、画面が上下にスクロールするようなものが、直感的な入力デバイスといえます。
2本指で写真や地図を拡大できるマルチタッチ操作も、すばらしく直感的なものでした。
(ピンチ操作での拡大縮小は、いまでこそ一般的なものですが、iPhone発表時にジョブズがデモンストレーションした際には、拍手喝采が起こった画期的なものでした)
ところが3D Touchで今のところ直感的に機能しているのは、メモアプリで手書きの太さが変わることだけです。
キーボードを強く押すとトラックパッドになるなんて、意味不明で、まったく直感的ではありません。
押してメニューを呼び出すのなら、押したら何か起こりそうな見た目を備えていて欲しいと思います。
そうでないと、慣れたユーザーが3D TouchのないiPadなどでも強く押してしまうという、さらなる問題を生むことになります。
今後に期待
そういうわけで、今回はじめて搭載された3D Touchは、機能としてまだ未成熟です。
「中上級者向けの機能」として提供するなら、デフォルトで機能オフになっている方が安全なくらいです。
初心者に「iPhoneって、なんか使いにくい」と思われる恐れがあるからです。
3D Touchのような圧力感知機能は、今後は他社の様々なデバイスにも搭載されていくでしょう。
不完全な形で普及する前に、アップルにはぜひ、お手本となるような使いやすいものに進化させてほしいと願います。
現在のiOS 9は、3D Touch機能がまだ秘密のころに発表されていたものなので、今後のアップデートで、より使いやすい形に進化するかもしれません。